あの子

 あの子、忘れてしまえないあの子、二十五歳年下のあの子、正確に言うなら、忘れられないのはあの子の面影とケツの穴の絶妙な締まり具合だ。

 あの子は当時、二十五歳で、わたしは五十歳だった。子供でもおかしくなくらい歳の離れた子だった。あの子と言っても、二十五ならもう立派な大人だ。

 あの子の顔の面影を思う時、わたしの股間にはあの子のケツの締まり具合が纏わりついてきて、図らずも勃起してしまう。

 あの子のことを思う時、年老いたわたしの股間は何か熱い塊にヌメリと包まれ、わたしのペニスに芯のようなものが通って勃起する。

 これを書いている瞬間だってそうだ、勃起している。

 あの子のケツは決してキツくはなく、柔軟性に富んでわたしのペニスに絡みつき、そして柔らかく締め付ける。若いケツでしか味わえない感覚だ。

 同世代を掘ると、大抵は肛門が緩んでいるか、力を入れて締め付けようとするのでなかなかイケない。

 若いケツは締まりながらも柔軟性がある。

 けれどもあの子は何もしない子だった。お膳立ても会話もセックスも、すべてわたし任せだった。ベッドの上でもろくに動かず、けれども見た目のよい男には許されるだらしなさでシーツの上に横たわっていた。

 初めてみた時からわたしの好みに合い、それなのにたった一回会っただけで終わってしまったあの子。

 坊主頭で、顔立ちがはっきりとしていて、今時の子らしくなく肌が褐色だった。わたしの方が色白だった。

 わたしには若さが眩しかっただろうか。

 実のところ、これまでに若い体はたくさん味わっているので、ため息が出るほどではなかったように思う。

 だから一緒に湯船に入ってあの子の体を眺め回しているときはそれほど期待していなかったのだ。

 ベッドの上でキスをして、体を舐め回して、ケツの穴も舐め回して、あの子が気持ち良くなってきた。

 あの子はコンドームをつけて欲しいと言った。

 わたしは一番薄いコンドームをつけた。だから今日は射精はできないだろうと思っていた。この年になると、コンドームをつけると射精しないことが多い。それどころか、コンドームをつけていると、勃起薬を飲んでいないと途中で萎えてしまうこともある。

 それなのに、あの子のケツの肉の襞は薄いコンドームを通してわたしに絡みつき、そして褐色の肌をしたあの子の顔は枕の上で声を出し、リズムに乗った二人は一緒に船を漕いでいるようだった。

 入り口が締まり、奥が絡みつくケツだった。

 わたしはあの子の乳首や首筋を舐めた。おいしかった。若い肌だ。わたしは打ちのめされた。

 大きく揺さぶると、あの子はわたしの背中に腕を回して絡んできた。ケツの穴の締まる部分がペニスに絡みつく。あの子は感じていた。

 しかしわたしはそれでも分析的に状況を眺めながらセックスをしていた。

 わたしはきっと、射精できないだろう、それどころか、途中で萎えてこの子に謝ることになるだろう、と。

 きっと、満足させてやるために口でしてやって終わらせるだろう、と。

 しかし、ちがった。

 突然にやってきたのだ、射精感が。

 これはイケるだろう、射精できるだろうという感覚が肛門と睾丸の間あたりに上り詰めてきた。

 その感覚がやってくると、もう止められなくなってしまった。

 先日相手をした別の二十五歳とはちがっていた。あの二十五歳の時は、相手を満足させてからわたしも射精するほどに余裕があった。歳を取るとそういうセックスができるようになる。わたしは実はあまり挿れる側をしない。けれども若いケツに打ちのめされた。

 あの子のケツはわたしのペニスをほどよく締め付け、全体を咥え込んで纏わりついた。

 その波がやってくるともうわたしは抵抗できず、射精した。あの子よりも早く。

 射精の瞬間、わたしは全体重をあの子の体に預け、首筋に顔を埋めた。首筋が愛しかった。わたしは汗まみれになっていた。ずいぶんと長い時間掘っていた。

 終わったあと、あの子の中からペニスを抜いた。だらしなく伸びかけのコンドームの先に、わたしの歳にしては割と多い白濁の精液が溜まっていた。わたしはそれをあの子に見せた。

 わたしは疲れ果てていた。もう五十なのだ。

 最後はわたしが乳首を舐めてやりながら、あの子は自分でしごいて射精した。それくらいの力しか残っていなかった、わたしには。

 やり終わった時は、それほど何も思わなかった。

 あの子は疲れて眠ってしまい、わたしの腕を枕に、何十分も寝ほうけてしまい、寝息すら立てずにわたしに抱きついていた。

 距離もあるし、この子とはこれきりだろうと思った。若い男がわたしの肩で眠っているのが愛おしい。けれども、これできっと。

 そう、あの子とも一度きりで終わってしまった。

 わたしはといえばそれからも男とやることがあり、その度にあの子のケツを思い出す。若いケツはちがうからだ。あの子のケツの締まりと絡みつきは、他の年頃の男では再現できない。

 あの子にまた来てくれないかと懇願したこともある。けれどもあの子とは途切れてしまった。

 今でも思い出せるのは、あの子の肉厚な内側と、枕に横たえた坊主頭、そして快楽に閉じた瞼、舐めまわした褐色の肌。あの子は確かにこの部屋で感じていた。

(終)