一人きりのクリスマス

 

 気温が下がってくると思い出す。この時期になってくると思い出す。寒くなると、思い出すんだ。遠い大都会のクリスマスに想いを馳せる。夢のようで、素敵なイルミネーションに彩られた大都会。わたしがいた頃はまだ今テレビで見るほどにはなかったけれど、目抜き通りの街路樹はイルミネーションで飾られていた。恋人たちは、手を取り合い、愛を囁く。笑顔を交わし、その裏には冷ややかな別れを用意していたとしても、それでもこの夜ばかりは愛を囁く。

 クリスマスを二人だけで過ごしたこともあった。プレゼントを捧げあい、部屋を薄暗くし、接吻を交わし、指を絡める。一生、一緒にいたいとそのときは思う。この夜ばかりはすべてが清らかな聖夜で、都会ではすべてが浄化されている。

 クリスマスを、大勢と過ごしたこともある。恋人のいないクリスマスは、友人知人と集まり、から騒ぎし、酒を飲む。ふざけ合い、写真を撮り、素敵な街を闊歩する。街はこの夜のために飾られ、どの店も和やかな雰囲気で、暖かそうだ。

 クリスマスを、一人きりで過ごしたこともある。一人きりのクリスマスは、胸にじんと来る。一人で街を歩き、来年のクリスマスはどうしているだろうと、想いを巡らせる。ずっと一人なのだろうかと、悲嘆することもある。街をゆく吐息は白く、ウールの手袋で手を温め、マフラーで暖を取る。一人きりでも、街をゆく。夜は紺色だ。わたしは夜は紺色だと思う。都会の夜は、特に。紺色の街の下、人々の笑顔を見ながら、自分がどんな顔をしているだろうなどとは思いもせず、街を歩く。買い物をすることもある。一人きりのクリスマスも、悪くはない。すべての人に幸あれ。

 この十三年間は、母と犬とわたしの三人でクリスマスを過ごす。祖母が生きていた頃は、祖母も含めて四人だったこともある。この山の端から、都会に想いを巡らせながら、クリスマスケーキと、安価なシャンパンと、それとチーズフォンデュで聖夜を祝う。

 誰もが幸せを願っていて、悲しい思いはしたくない。そういう点で、誰しも人は変わらない。どんな境遇にいても、人は同じだ。そういう意味では、人はすべて平等だと、わたしは信じている。

 クリスマスを、大勢で過ごしたことがあった。クリスマスを恋人と二人で過ごしたこともあった。一人きりのクリスマスもあった。すべての人に幸あれ。

(終)