00年薔薇族連載ゲイ小説「雨の牙」

拙作、2000年薔薇族連載作品「雨の牙」について。こちらの作品、もう救いようのない悲恋に終わる作品なのでメンタルが強い時に読んでいただきたいのですが、原稿用紙100枚の壮大な悲劇を薔薇族に投稿し、薔薇族の方でも作品のクオリティを買ってくれました。しかし100枚となると一度で掲載しきれなくて連載になってしまう。

エロいハッピーエンドで終わる短編が多く送られてくる中、薔薇族もなかなか掲載に踏み切れなかったようですが、捨てるに捨てられない壮大な悲劇だったもんですから、編集部も2年間、掲載のタイミングを考えてくださったようで、97年に執筆した作品ですが2000年にようやく日の目を見ました。

この作品の掲載に時間がかかってしまったもので、わたしは「ボツなのかな?」と思ってBadiに投稿するようになっていたんです。この作品がもっと早くに掲載されていたら、Badiに送って掲載された作品も薔薇族に送っていたのかも…。

では以下、一部伐採です。

 勇一は、竜二の全身を舐めるように見た。竜二のもう片方の腕は下半身を覆ったタオルケットの中に礼儀正しく突っ込まれていた。勇一はそれをそっとはがしてみた。すると、竜二の手は自分自身の萎えたぺニスを握っていた。勇一は笑った。まただ。彼は思った。彼はこの光景を毎晩見ていた。彼は竜二の胸を揺すった。

「なんだよ…」

「ねえ竜二、前から気になってたんだけど、どうして竜二は自分のちんちんを握って寝るの?」

「ん? 手が淋しいんだよ」

彼は目をつむったままで眠たそうに言ったが、照れ笑いを浮かべていた。

「いつもそうやってるの?」

「ああ、小さい頃からの癖なんだ」

「変なの…」

「ははは…、うるせえなあ、なんか落ち着かねえんだよ、手が」

「それじゃあぼくのちんちんを握ればいいじゃない」

「へへへ、それもそうだな」

 勇一は竜二の手を自分の股間へ運んだ。

「これでもう淋しくないでしょ?」

「ああ」

「朝まで放しちゃダメだよ」

「はいはい、わかりましたよ」

 しかし次の朝目が覚めると、勇一は竜二が彼自身のぺニスをまた握っているのを発見した。彼は嫉妬した。どうして自分のではダメなのだろう? 自分のでは淋しさがまぎらせないのかな、と。毎晩同じことを試してみたが徒労に終わった。いつも朝が来ると、竜二は自分のぺニスを握っているのだった。勇一はその奇妙な光景を目にする度、竜二って変だなと思った。

 ふたりが知り合ってからちょうど一ケ月経ったころだった。九月に入ったばかりのある晴れた日曜日、勇一は下高井戸のマンションに帰ってセミダブルのベッドを運び出した。つぶれた湿っぽい煎餅布団にうんざりしたからだ。彼は運送屋に指示して部屋からベッドを出させた。そして玄関を出ようとして何気なく部屋の中を振り返った。部屋の中はすっかり空っぽになっていて、そこはもう人の住む所とは思えなかった。彼は運送屋を下に待たせ、残りの荷物をかき集めた。

 彼は部屋を引き払う決心をした。竜二は一瞬驚いたが、

「お前がすることなら、俺はなんだってかまわないぜ。どっちみち一緒に暮らしていたようなもんだしな」と笑って言った。勇一は、その笑顔を見て自分の決断に間違いはなかったと確信した。

 その晩、勇一はマンションから持ってきたCDを祭りの露店でも開くように畳の上に並べて整理した。竜二はその様子をそばで眺め、CDを一枚手に取って首をかしげた。

「こんなに持って来たら邪魔かなあ?」勇一は申し訳なさそうに言った。

「うんにゃあ、そりゃあかまわないんだが、お前、読むだけじゃなくて聞くこともできるんか、英語?」と、時々出る九州訛で訊いた。竜二のぱっちりとした二重瞼の下では黒々と澄んだ大きな瞳が好奇心旺盛な子供のように光っていた。勇一は彼の目が好きだった。

「ねえ、竜二の目ってどうしてそんなに透き通っているの?」

 勇一は竜二の頬を両手で包み、それから瞼をそっと指でなぞった。

「どうしてって…。うーん、俺の目って透き通ってるのかなあ」

「ほんとにきれいな瞳だよ」

「そりゃあたぶん、お前ばっか見てるからだよ」

「バカ…」

 勇一は竜二の首に腕を回して口づけた。竜二は勇一の体を包み込むように抱いた。竜二の体にすっぽりと包み込まれた勇一は、そこが彼の本来の居場所のような気がした。それは、彼が東京に出てきて以来初めて感じる安らぎだった。彼はやっとできた居場所を愛撫した。彼はもう他に居場所は要らないと考えた。

「ねえ竜二、ぼくといて幸せ?」

「当たり前だろ」

「ぼく、ずっとここにいてもいいの?」

「お前がいたいんなら、いつまでだっていいぜ」

「ぼく、会社を辞めようと思うんだ」

「なんだよ、いきなり」

「ぼく、竜二の世話をしたいんだ」

「今でも十分世話になってるぜ」

「もっとしたいよ。ねえ、ダメかなあ」

「お前が言うことなら何でもOKだぜ。お前一人くらい俺が食わしてやるよ」

「ほんと!?」

「お前こそ俺なんかといて幸せなのかよ」

「どうして?」

「俺、お前と違って頭悪いしよ」

「関係ないよ。ぼく、竜二のこと誇りに思ってるよ」

「なんでだよ…こうするからか?」

 竜二は意地悪く笑いながら勇一の首筋に吸い付いた。勇一は身をのけぞらせた。竜二は彼をベッドの上に運んだ。ふたりは体を重ねた。するとまた勇一の細胞が時を刻み始めるのだった。

 殺風景だった竜二の部屋はすぐに勇一の色に染められてしまった。勇一は植物が好きで、サボテン等の観葉植物から色とりどりの花を付ける鉢植えの草木を集めていた。また、彼は街で美しいキャンドルを見つける度に買わずにはいられなくなった。ピラミッド形のキャンドルやボール形の押し花キャンドル、そして側面に金彩を施したキャンドルを部屋に飾った。彼は今まで自分のそういった嗜好に気が付かなかった。自分が同性愛者であることを隠そうとする機能が心のどこかで働いていたため、彼が本来持っていた美しいものへの憧憬を押し殺していたのだろう。それが竜二と暮らすことによって蘇ったのだ。人を疑うことを知らない竜二の透き通った瞳と見つめ合うことで、勇一の目を覆っていた猜疑心というもう一枚の網膜が消滅してしまったのだ。

「それにしても見違えちまったな」

 竜二は、突然色彩があふれてしまった自分の部屋を見回して言った。

「こういうの嫌い?」

「俺はもともと部屋なんて気にしねえからいいけどよ、人が見たら何て言うかなあ」

「女っぽいかなあ?」

「ちょっとな」

「イヤ?」

「なに拗ねてるんだよ。俺、お前のこと好きだっていつも言ってるだろ」

 竜二は勇一を抱き寄せて頬にキスした。彼は勇一のすべてを受け入れた。

 変わったのは竜二の部屋だけではなかった。勇一の生活も一変した。彼は仕事を辞めて竜二の世話に専念した。働くといえば生活費の足しにするため近所の塾でワープロ打ちのアルバイトをするだけだった。彼は竜二の世話をすることに生きがいを見出だした。これまで無縁だったヘルメットや作業着も今ではすっかり馴染みのものになった。毎朝目覚めると、勇一は竜二に朝食を食べさせて送り出した。竜二は朝食を食べ終えるとベッドに腰掛けて必ず勇一を呼んだ。

「おーい、靴下」

「はいはい」

 勇一は竜二の前に座って片足ずつ靴下を履かせてやった。これは毎日の儀式になっていた。それをしてやらないと、竜二は拗ねてなかなか部屋を出ようとしないのだ。たとえきちんと儀式を終えたとしても、竜二はすぐには部屋を出なかった。彼は玄関先で勇一に何度もキスをねだった。

「早く行かないと遅れちゃうよ」

 勇一が急かしてはじめて竜二は部屋を後にした。勇一はわざと素っ気なく彼を送り出すが、実は彼が部屋を出たあとでこっそりドアを開け、彼の後ろ姿が消えてしまうまでずっと見守っていた。

 勇一は竜二が出かけた後、竜二が脱いだシャツを洗濯籠から拾い上げて鼻に押し当てて匂いを嗅いだ。彼は竜二の臭いが好きだった。彼がいない間も、そうやって彼を感じていたかったのだ。彼はその後家事を終えると塾のバイトにゆき、午後いっぱいそこで働いた。彼は塾の英語講師として働くことを勧められたが、家に帰ってまで翌日の授業の予習をするのは嫌だったので断った。彼は竜二と過ごす時間を何よりも優先させた。

 ふたりはいっしょに暮らしはじめてから連れだって外出することがほとんどなかった。たまにビデオをレンタルして観たり、まだ強い陽射しの下公園を散歩することはたまにあったが、それ以外は部屋に籠っていちゃついていた。休日の過ごし方も同じだった。ただ戯れの時間が長くなるだけだった。

 勇一は本来、旅行が好きだった。しかしそれも行きたいとは思わなくなった。見知らぬ場所へ行くと、たとえそれが竜二といっしょだったとしても、竜二が風景と同化して小さく見えるのではないかと不安に思ったからだ。

 そして彼は昔読んだ本も大切にしていたCDも捨ててしまった。今の彼には自分自身の物語を語ることができるし、竜二のために体で音楽を奏でることができるからだ。

 日を追っ夜が長くなっていった。竜二と勇一はベッドサイドにキャンドルを点して愛し合うようになった。彼らは毎晩キャンドルの灯りに包まれて体を重ねた。勇一は疲れきって眠っている竜二の裸を見るのが楽しみだった。キャンドルの灯りに照らされた竜二の褐色の肉体は、ふくよかな赤みをさして美しかった。勇一は突然彼のことがいとおしくてたまらなくなり、この五つ年上の大柄な男の体を撫で回すことがよくあった。そうやってふたりに幸せな日々が続いた。しかしそれは長くは続かなかった。

続きは電子書籍で☺️

Apple Books ↓

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Kindle ↓

マルグリット・デュラス「エクリール」

 わたしの小説を読んでいただいている方には昔から見られる傾向なのですが、ご自分も小説を書いていらっしゃるというファンの方が割と多いんです。いわゆるRead&Writeの方ですね。

 それでわたしも前々からわたしなりに書くことについても書きたかったわけですが、なかなかそういった機会もなく…。

 これからは書くにあたって参考になりそうなこと、試してみる価値がありそうなことについてもブログで取り上げられたらなと思います。

 今日ご紹介するのがマルグリット・デュラスという「戦後最大の女流作家」と謳われたフランス人作家の本「エクリール」。

 遡って解説すると、デュラスという作家はノーベル賞がふさわしいと散々に言われた作家です。実際に候補に上がっていたという話しですが、戦時中のドイツ軍へのレジスタンス運動で、捕まえたドイツ兵にリンチを加えていたという事実がノーベル賞に相応しくないと、最終選考で落とされたとの説もあります。それくらいの作家でわたしが敬愛している作家です。

 この本はデュラスの小説ではなくて、デュラスが書き残した「書くことについて」の本です。書くこととはどういうことなのか、書くためには何が必要なのかをデュラスが「語った」のです。おそらく文字起こしはライターがやっていると思います。

 わたしが印象に残ったのは、「作家は書かれることよりも強くなければならない」という言葉でした。

 また、一匹のハエが死ぬところを三時間観察している箇所や、やはりただ事ではない天才だったのだろうと思います。狂気についても語っています。

 良かったら下のリンクからアマゾンを覗いてみてください☺️今のところ電子にはなっていないようです。

エクリール―書くことの彼方へ

あらためまして、リュッツォです☺️

みなさん、こんにちは🙂 改めまして、リュッツォです。

わたくし、プロフィールにある通り今年50歳💦25歳の時に薔薇族という雑誌にゲイ小説「真夜中の雨」を投稿して採用されたのがデビューのきっかけとなり、それから25年が経ちます(笑)

薔薇族では主に白井俊介というペンネームで投稿していました。

そしてペンネームをタテイシユウスケに変えてゲイ雑誌Badiに「調香師」を送ってデビューを飾り、その後しばらくタテイシユウスケを名乗っていました。

40代は病気療養などあってまるで執筆できなかったのですが、昨年創作活動に復帰しました。そしてようやく今年になって過去作品を電子書籍化したりサイトを立ち上げたり。

もう既に忘れられた存在なので改めてご挨拶を🙂

わたしの作品は薔薇族作品はストーリー性を重視した傾向があり、Badi作品は文体を意識した少し気怠いトーンのものが多いかと思います。

文芸作品「海亀の眼」に至ってはマルグリット・デュラスの影響を色濃く表した退廃的な作品となっています。

ぜひお手に取って読んでくださいね🙂

Apple Books普及活動のため、Apple Booksではサンプルでかなり読めるような設定にしてあります。作品によっては最後まで読めます。特にiPhoneユーザーの方はぜひ☺️

⭐️Kindle著書一覧↓

https://www.amazon.co.jp/l/B07SGGYCFW

⭐️Apple Books著書一覧↓

https://books.apple.com/jp/author/リュッツォ/id1466157835

成人向け漫画電子書籍サイト

みなさん、こんにちは☺️

うちのサイトに来ていただいているのは主にゲイ小説、BL小説を読みたいという、いわゆる男同士のエロい小説を読みたいという方だと思います。(そういう趣旨のサイトなのでいいんです(笑)

わたしは歳も歳なのですが、最初にゲイ小説デビューしたのが薔薇族。あの頃はネットなんてなくて、しかもまだパソコンも一般的ではなくて、ワープロで小説を書いて秘密裏に薔薇族に投稿し採用される、という形でした。

薔薇族からは滅多に連絡はなく、小説が採用されたら掲載された薔薇族がいきなり送り付けられて来て、あの「お弁当箱みたい」と評された雑誌がポストにドーンと(笑)

媒体としては雑誌一人勝ちで、一人勝ちも何も他に媒体がないんですもの、今みたいにネットなんかないですから。

今はネットもあって電子書籍で縦書きで小説が読める時代ですよね。やはり縦書きの美しさは日本語の特徴ですので、当サイトでも電子書籍に力を入れている点、ご理解くださいね☺️

うちのサイトにいらっしゃる方は基本、小説が目当てかと思います。でも一定数の方は漫画にも興味があるのではないかなと思って今回ご紹介したい記事があるんです。

成人向け漫画というかエロ漫画ですよね(笑) エロ漫画が読めるサイトをいくつか紹介している記事でとてもうまくまとまっています。

なんでもdropbooksという違法サイトがあったらしいのですが、違法ゆえ閉鎖されたそうです。その代替えとなるサービスですが、きちんと合法のサービスのようです。ぜひ記事を見て目当てのエロ漫画見つけましょうね☺️ いいのが見つかることをお祈りしております🙂

それでは!

薔薇族95年掲載ゲイ小説「真夜中の雨 – 掠奪」

 男は明るい嬉しそうな表情で言った。大柄でいかつい感じの体、野性的で彫りの深い、知性とはかけ離れた顔は、孝志の友達とは思えない。でもけっして無教養とか無知というのではなく世の中に知識というものが存在する以前に生きていた人間のような、無垢で純粋さを持っているような男だった。孝志の陰にいた僕の存在に気が付くと、表情を変えて僕をじっと凝視した。僕は本能的に、何かコトが起こる前兆を予感した。 
「これは俺のパートナーの智。このまえ電話で話しただろ、三ヶ月くらい付き合ってるって。コイツは俺の昔からの友人の健次」
 孝志が僕のことを紹介している間も、健次は僕のことを露骨に見つめている。べつにいやらしい視線ではなかったが、野獣が獲物を物色するような目付きだった。孝志も、あまりにしつこい健次の視線に疑問を持ったのか、いぶかしげに僕たちを見比べ、
「お前ら、知り合いか?」と尋ねた。
「いや、お前の彼氏があんまり可愛いから、見とれてたんだよ」と冗談っぽく笑い、「それにしても可愛いな」
 それから僕たちは孝志を挟んで座り、孝志と健次が長い間話し込んでしまったので、僕はカウンターの中にいた店の子をつかまえて世間話とか軽い冗談とか当たりさわりのない話をして時間をつぶした。その間、何度も何度も健次は僕のことを見ていた。一時間くらいたって、孝志がトイレに立った。僕はできるだけ健次の方を見ないようにしていたが健次は僕に顔を近づけて、
「君は孝志のことが好きなの?」と耳元で囁いた。
「ええ、もちろん」
「じゃあ、孝志は君のこと好きだって言ったか?」
 僕はその質問には答えなかった。
「アイツは恋愛に醒めてるからな」と言いながら僕の膝の上に手を置き、「俺は好きだぜ、君のこと」と囁きながら、僕の耳たぶを軽く噛んだ。僕は冗談ぽく笑いながら、しかしきっぱりと突き返した。
 それでもしつこく肩に手を回しながら、
「俺は本気だぜ」ともう一度顔を寄せてきた。
 ガシャッという音を立ててトイレの扉が開くと健次はスッと身を退き、何事もなかったかのように話に戻った。
 それから二週間後の金曜日、孝志と僕は、僕の二十四歳の誕生日を祝う約束をしていた。もうバースデーケーキという年でもない。ワインとグラスを二つ用意して僕は孝志を待っていた。五月も下旬になると日がずいぶんと長く、七時になってもあたりは未だ明るかった。藤色に暮れなずむ空を見上げながら僕は唇を歪めた。約束の時間を十分過ぎていた。
 孝志の仕事がいつも忙しいのはわかっている。十分ぐらいいいサ。もう少し、いや一時間でも二時間でも待ってやろうじゃないか。頭ではわかっていてもひとり待つ時間はせつなく、時計の進み方がやけにおそく感じられた。すっかり日は暮れ、窓からはひんやりと湿った空気がしのび込んできた。頬を撫でる風が心地よかった。適当にそのへんに置いてあった読みさしの雑誌を手にとる。ぺらぺらとページをめくってみたがすぐにうっちゃってしまった。時計を見ると八時四十五分。孝志の身に何かあったんだろうか。窓を開けて駅へと続く道に人影を探してみる。電話が鳴った。こういう時にくる電話はまずろくな知らせではない。案の定、孝志からだった。
「ごめん。急な仕事がはいって行けなくなったんだ。こんど絶対に埋め合わせをするから、ほんとうに申し訳ない」
 しかたがないサ、僕たちは「お互いのプライバシーを尊重し合う関係」なのだから。孝志はたとえ僕が泣いて頼んでも仕事をずらしてくれるようなことはしないだろう。僕は孝志のものなのだ。せめて付き合っている間くらいはイイ子でいてやろう。
 でも、どうしても誕生日にひとりでいる気になれなかった。二丁目にでも出てみようか。敏彦を相手にオネエぶっこけば、少しはすっきりするだろう。それくらいは「お互いのプライバシーを尊重し合う関係」の条項に含まれていてもいいはずだ。
 僕は大急ぎで着替えて二丁目に繰り出した。敏彦の店のドアを開けた僕は凍りついてしまった。健次がいたのだった。そのまま踵を返して逃げようかとも思ったが、敏彦が、「いらっしゃい、智、なによあんた、最近全然顔出さなかないでェ」と奇声をあげたのであとに退けなくなった。それにだいたい、なんで僕が逃げることがあるものか。僕は勧められるままにカウンターに座った。健次は立ち上がり、僕のうしろに来て、何のためらいもなく僕の肩を両腕で抱きながら、
「君がこの店によく来るって聞いて週末はずっと待ってたんだぜ。何でも好きなものを頼めよ、今日は俺がおごるぜ」とわるびれるようすもなく言った。
「けっこうです」
「そんな、おこんなよ」
 囁くように言いながら、僕の肩に回した手をますます絡ませて首筋に口を寄せ、体をくねらせる僕を押さえ付けて何度も何度もキスした。なんて常識外れな男だろう。こんな人前で、しかも明らかにいやがっている僕にこんなにしつこくキスするなんて。僕はカウンターを両手で、バンッ!と叩いて立ち上がり、
「やめてください」と鋭く叫び、健次を突き飛ばして店を飛び出した。  






 なりふりかまわず全力で走り、エレベーターのボタンを押した。運よくエレベーターの扉はすぐに開いた。一回のボタンを押し、「閉」のボタンを何度も叩く。扉が閉まる寸前に、健次がものすごい勢いで駆け込んできた。
[しまった‼︎]
健次は僕に抱きつき馬鹿力で締め上げた。
「やめてよ!」
 思い切り叫びながらもがいてみる。身動きがとれない。骨が折れてしまいそうだ。やがてエレベーターの扉は閉まり、ブーンという振動音を発しながら下降した。僕が騒ぎつづけると、健次は右手で僕の頬を握り締めて口をこじ開け、舌をねじ込んだ。歯が折れるかと思ったほど強引で痛かった。舌に噛みついてやろうかとも思ったが、口がどうしても閉じない。足をバタつかせても両手で健次の背中をブン殴ってもまったく効果がない。
 エレベーターは一階に着きドアが開いた。僕は命拾いをした気がした。このビルは二丁目でも人通りの少なくないあたりにあり、しかもエレベーターは大通りから見渡せる位置にある。今日は金曜日、この時間帯なら誰かがいるはずだ。僕は足でエレベーターの壁をドタン、バタンとわざと音を立てて蹴っ飛ばしながら、健次の肩越しに扉の外を見た。期待とは裏腹に、誰もいない。思い切り力を込めて突き飛ばそうとしたがむだだった。健次は後ろ手に屋上のボタンを押し、続いて「閉」のボタンを押す。無情にも扉がゆっくりと閉まった。
 万事休す。僕の脱出作戦は失敗に終わった。それでも途中の階で誰かが止めてくれるかもしれない。僕はささやかな期待に望みをつないだ。しかしエレベーターは一定の速度で上昇し続け、途中どの階にも止まることなく屋上までたどり着いた。
 全身の力が一気に抜け、恐怖で涙が溢れたが、それでも右腕だけは力なく健次の背中を叩き続けていた。エレベーターの扉が開くと、健次はいやがる僕を引きずり出してコンクリートの上に突き倒し、間髪を入れず僕に覆い被さってきた。僕は体の間隔が少し開いたのをいいことに健次の股間を蹴っ飛ばしたが、それほど効を奏せず逆に引っぱたかれてしまった。
「じっとしてろよ!」
 健次は僕の両手首を地面に押さえ付けて首筋を攻めはじめた。健次の髭の剃り跡がチクッとした。もうどうにもならない。力ではとてもかなわない。もがいてもむだだ。健次は僕の服を引き裂くように脱がし、乳首や脇の下を荒々しく吸った。 
 何の感情も起こらなかった。ただ僕は虚空を見つめ、[ああ、自分は犯されているんだ]と思った。涙があふれた。
 健次はふと僕をやさしく抱きしめて、
「お前が好きだ。好きで好きでどうしようもないからこうしたんだ」と僕の耳元で言った。そしてまたすぐに僕の体を攻めにかかった。僕はもう諦めていた。ただ、ただ、早く終わってくれることだけを願った。健次は夢中になって僕の体を貪った。ときどき僕の名前を囁いたり、「好きだ」と言ったりした。そしていよいよ盛り上がってくると、健次は右手の人差し指を自分で舐め、僕のアヌスに突き刺した。


わたしの処女作にして薔薇族デビュー作「真夜中の雨」。掲載された雑誌が届いたときはメインタイトルを「掠奪」にされてしまって軽く泣きそうになったうぶなわたしでしたが、この作品ももう来年で25周年です。キャンペーンなどやろうと思っています。

書いた当時のことはとてもよく覚えていて、カンヌ映画祭でパルムドールを取った「ピアノレッスン」という映画の三角関係と熱情が頭にあって、「あんな作品が書きたい」と思ったのが小説を書くことになった発端です。

当時は本当に情熱と誰かに読んでもらいたいという気持ちだけで書き進めていました。でもあの頃の情熱は今でもわたしの根底にあるものと同じだと思ってます。

場面がコロコロと変わってゆく小説ですが、よかったら電子書籍などどうぞ☺️

http://books.apple.com/us/book/id1466154989

一部書籍Apple Books撤退のお知らせ

わたしの認識が甘かったのですが、Kindle Unlimitedに参加している書籍は他の電子書籍販売会社(?)で電子書籍を販売してはいけないそうです。

そこでほとんどの書籍はKindle Unlimitedから撤退したのですが、下記作品については引き続きKindle Unlimitedに残ることにいたしました。

これは新たなファン獲得の意味もありますが、以前からのファンの方にはすでに無料で書籍をダウンロードしてもらったものですので、Apple Booksから撤退しても以前からのファンの方には影響があまりないと判断いたしました。

以下の書籍につきまして、一旦Apple Booksから撤退いたします。今月いっぱいはApple Booksでも見れる状態にしておきます。

また、Apple Booksから撤退してもKindleアプリをスマホやタブレット端末に入れればどなたでもKindleで読めますので♪

以下の作品につきましてはKindleで人気のため、ご理解願います。

(新しいものから)

⭐️ゲイ小説

*凍てつく背中から

http://books.apple.com/us/book/id1486053602

*BOY

http://books.apple.com/us/book/id1484018849

*薔薇色に滅びゆく

http://books.apple.com/us/book/id1479656257

*Stranger

http://books.apple.com/us/book/id1479660641

*Precious Moments

http://books.apple.com/us/book/id1479659985

*エスプレッソ

http://books.apple.com/us/book/id1479657450

*ほほにかかる涙(注 写真バージョンのみ)

http://books.apple.com/us/book/id1468854105

⭐️純文学作品

*上弦

http://books.apple.com/us/book/id1479662477

⭐️テキスト

*ラブレター

http://books.apple.com/us/book/id1479657245

*綴り紐

http://books.apple.com/us/book/id1479657934

貧困・虐待を乗り越えたゲイの小説

*子供の頃は経済状況は普通の家庭。

*子供の頃から日常的に父親の暴力。ベランダから逆さ吊りにする、ライターで足をあぶるなど言い始めるとキリがない。

*母親は自分の生活安定のために見て見ぬ振り。

*わたしが10歳の時に父の会社が倒産、父は数千万円の借金を抱え、子供だったわたしが借金取りの相手をする。

これだけお話ししても結構すごい家庭だったと思います(笑)

大学は授業料免除と奨学金でなんとか出て、社会で皆さんに助けられてなんとか活躍しておりました。

ちなみにゲイだというのと貧困・暴力家庭は因果関係はないと思います。豊かな家庭で大切に育てられたゲイをたくさん知っていますので。

そんなわたしが体調に異変を感じて病院へ行ったのが12年前。あらゆる精密検査に問題がなかったので精神的なものだという診断になりました。精神薬の投与が開始されるも今でも社会復帰できず、もう年齢的にもどれだけ面接を受けても落ちるようになりました。

そんなわたしが唯一今でも自信を持っているのが書くこと。会社員になったばかりの頃から小説を書き始めて、薔薇族やBadiといった男性同性愛者向けの雑誌で小説を掲載してもらっていました。もちろん、世間並みの原稿料(中央値)をもらっていました。

働こうにも仕事もなく、そんなわけでまた小説を書くことに戻って来たのですが、過去に書いた小説はずらりとKindleストアとApple Booksのブックストアにあります。

わたしの生い立ちを滲ませるような陰のある作品が多いですが、どうやら一定の人はすごく気に入るようです。

最近では純文学文芸作品を旺盛に書いております。

良かったら試しに一つ二つどうぞ☺️

Kindle ↓

https://www.amazon.co.jp/l/B07SGGYCFW

Apple Books ↓

https://books.apple.com/jp/author/リュッツォ/id1466157835