陶器

肌を
磨いて
磨いて
白い陶器にして

あなたの
肌を
磨いて
磨いて
白い陶器にして

二人で磨いて
磨いて

陶器の肌を
こすり合わせて

二人の体は
陶器のように
冷たくて

こすり合わせた
その音色
切なくて

温もりのない陶器を
こすり合わせて

心まで
陶器になって
冷たくなって

二人はぶつかり合って
粉々に壊れて床に落ち

お互いの破片の見分けがつかない

But,
二人で互いにカケラを拾いあって
二人を拾い集めて
またやり直せるだろうか

六月

六月が来た
どうりで日が長いはずだ
雨がしとしとと降り続くなか咲いていたスイレンは、
だらしなくもしどけなく閉じ
夜が来る

夜が来ると、何月だって一緒だ
いや、やはり違う
やはり六月の夜だ

空気は湿り気を帯び
朝まで眠りは深い

お前が生まれた六月
麗しい翠雨の囁き

雨が降り続くが気分は沈まない
変わり目の微かな痛みは越えた

あの人の半袖姿が見れるまで
生きていて良かった

あの雨上がりのBack View
少し焼けた腕を振って歩くあの人

わたしは縁側から雨を浴びる楓を眺め
ふいに昼間の月を見上げ
あの人の窓

空から落ちてくるのは
もはや涙ではあり得ない

わたしとお前が遊んだこの庭を
隅々まで濡らし
わたしとお前が遊んだ跡を消す
雨雫の六月

石鹸

ささくれた手を
白い石鹸で洗っていたら
その白い石鹸が、
ギザギザになってしまった

その白い石鹸で手を洗い続けていたら
わたしの手は棘だらけになった

棘だらけの手で
散々傷つけて

だから、

棘だらけになった手を軽石で磨いて
磨いて磨いてきれいに磨いて
ツルツルの手に戻したいのだ

また手を組んでお祈りできるように
跪き、
赦されることをお祈りできるように

ペイルブルーのホテル

明け方の夢だった
わたしは八角形の踊り場にいた
壁がペイルブルーのラグジュアルなホテルだった
憧れのあなたが部屋にいた
わたしが部屋に入って行くと
あなたはわたしの横に並んでくれた
温かい体温を側に感じた
突然、あなたはわたしの手をとって軽く握った
そしてこう言ったのだった
「わしら、ほんまは兄弟なんよ」
あなたは照れていた
わたしも照れていた
わたしたちは二人とも照れ笑いを浮かべた
あなたの手の温もりが嬉しくて、一日上機嫌だった
こんなに近くにいるのに
あなたは遠い存在だ
あなたに手紙をしたためたい
ペイルブルーのホテルにて

閉園

暮れる前の水浅葱
桜貝のうろこ雲

その下
桜の園の聖域で
今年も宴が執り行われた

どこからともなく集まる
老若男女は酔いに染まり

目は赤く
頬垂れて
がなり声

宴に踊る
あぐらの男
姉さん座りの
亜麻色の髪

桜が散ると
神隠し
新緑の歌で
閉園す

新しき尋ね人
追われし落人

木々が見守る
宴の園
上弦の月、
流れ行く

読む、読まれる

欠けた半月が
また半月に戻り
そしてまた満ちてゆく
陰暦でごさる

イマはムカシ、
洗濯洗剤の空き箱を集めては
組み立ててお城を作る男の子がいた
男の子はお城の中にこもっていた

小学校にあがり、
作文の課題が出た

赤い鳥が宝箱の鍵をくわえて飛んで逃げてしまいました、
この物語の続きを書きなさい、
紙が足りない生徒はいくらでもあげます

男の子は薄暗くなるまで書き続けた
男の子が六枚目を要求した時、
先生は言った、
「そろそろ終わりにしてくれないかな?
みんな帰っちゃったよ」

読むということは、
作者への最大の冒涜にあたりうる

わたし自身、
読まれることに抗議したことも

しかし、

デュラスと鏡花に懇願した
お願いです、
跪きます、
あと少し冒涜させてください
それでも冒涜させてください、と

わたしにとって、もはや、
書くことは瀬戸内の神々への奉納になった

故郷、美しき厳島に宿る
極彩色の神々

書くことは舞踊に似ている
足を踏みならし
血が沸き立つ舞踊

読まれることは、
供養されること

苔むす石になり
転がってはすり減る石になること

真似

メタモルフォーゼを真似て
メタモルフォーゼを真似て

変身、変身、変身
華麗なる綱渡り
華麗なるメタモルフォーゼ

変わりゆく変化のメタモルフォーゼ
メタモルフォーゼを真似て
メタモルフォーゼを真似てきた

したくてした改革と、
しなくちゃならなかった変革
それはまた別だけれど
真似して生きてきた

ずっと真似て真似て真似続け
そして出来たのが

白髪混じりの坊主頭
犬の召使いの
リュッツォ爺さん

新品のメタモルフォーゼはいずれ使い古され
新時代に引導を渡される

それでも、
メタモルフォーゼを真似て
メタモルフォーゼを真似て
変身を真似て変わり続ける

生きている証のメタモルフォーゼ
メタモルフォーゼは、生きていく証